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ウルトラマンダイナ
第20話「少年宇宙人」◆ 脚本/太田 愛,特技監督/原田昌樹,監督/原田昌樹.
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満足度: ★★★★★

鑑賞メモ

 バトルシーンがなく,ウルトラマンとしては掟破りなんでしょうけど,そんなことは気にならない太田脚本の傑作!ストーリーは極単純なものでしかありませんが,何と言っても行間に溢れる情感が素晴らしいと思います.私はこういう話には特によわいんですよ.もう少しで泣く所でした.脚本に加えて,俳優陣の演技,映像,音楽といった演出が絶妙に相互作用しあって,美しいジュブナイル作品になっているのではないでしょうか?

脚本

 運命に直面した時にも、人間という存在は決してそれらを自分の思い通りにできるわけではなく,限られた力,限られた命しか持たない不完全な存在です.にもかかわらず,人は時として,その状況の中で戸惑い怯えたりしながらも精一杯なすべきことをなそうとするし,お互いを思いやろうとします.そういう人間の良き資質を鮮やかに描き出す力が太田愛さんの脚本にはあると思います.

 「シビアな運命」をキーワードにした場合,今の日本の世相では,人間の醜さ,弱さ,闇などを描けばおそらく一定のリアリティがあります。しかし,それは逆に言えば「人間の美しさ」や「光」を白々しくなく,説教臭くもなく素直に書くのが難しい時代ともいえるのではないでしょうか?そんな中,いくつかのシリアスタッチの太田脚本は,背筋のピンと伸びた人間の魅力をストレートに伝えてきます。実際,この「少年宇宙人」では「スケープゴート」となるような「悪者」は一人も登場しません。にもかかわらず,説得力があり感動的な作品に仕上がっています。それが可能なのは,寄る辺なきこの世にあることの「覚悟」といったものと,それでも何とか生きていこうとする人間という存在への「いとおしさ」が作品を背後からしっかり支えているからだという気がしてなりません。

 ウルトラマンコスモス「雪の扉」とならんで私の大好きな太田脚本&原田監督コンビの作品です.「少年宇宙人」も「雪の扉」も,小さな子供よりむしろ大人の方が感動するかもしれません.自らの決断のもと,人生を自分自身で担っていくことの不安と喜びを感じたことのある人の方が身に滲みる話だと思います.そういう意味では「大人のためのジュブナイル」と言った方がいいのかもしれません.

音楽

 音楽も作品とマッチしていて素晴らしかったです.サントラに「少年宇宙人」のテーマとして収録されているM92は美しく覚えやすいメロディラインをもつ名曲で,楽器構成の異なる複数のバージョンのいずれにも聞き惚れてしまいました.この曲を聞くといまでも数々の名場面が脳裏に甦ってきます.

俳優陣

 サトル,たっちゃん,みのっち役の三人は,語られる言葉よりも行間の「間」や「表情」が重要な難しい芝居が要求されていると思いますが,見事に演じきっています.彼等のシーンでは友情や優しさや気遣いが溢れていました.ダイナ世界で子供時代を過ごせるなら彼等と友達になりたい,そんな気がしました.

 そして,忘れてはならないのは,石井めぐみさん演じるサトルのお母さんです.最後の夜,サトルのためにホットミルクを作り,マフラーを巻いてあげるシーンの手つきは完璧に母親のそれで,続く台詞とともに見るものの胸を打ちます.また,サトルの机の上の作文の宿題「ぼくの未来」が,まだタイトルだけしか書かれていないままに残されているのを無言で見つめる母の姿も泣かせます.決して台詞は多くないけれど,細かい仕草や表情から子を思う母の気持ちが切々と伝わってきました.

映像

 いくつかのシーンでは映像の美しさも印象に残りました.ラセスタ星人たちが,氷付けとなった母星を離れ,紫の流星となって宇宙へと旅立っていくシーン.サトル,たっちゃん,みのっちの3人が神社の石段を登るシーン.境内でサトルがアスカの存在に気付いてテレパシーで会話するシーンなどは目をつぶるだけで思い出すことが出来ます.

 そして,エンディングも心憎い演出で感動的.

その他

 と,まあ,ベタホメをしてしまいましたが,気になる所も.それはサトルが変身したラセスタ星人の姿.デザイン自体は愛くるしく憎めないものですが,サトルの年齢より低めに見えてしまうこと.人間体のサトルは,もの静かで理知的な雰囲気をたたえていたので,宇宙人体もう少し少年ぽさがでているとパーフェクトだったような気がします.まあ,しかし,宇宙人の見た目が人間のそれより若く見えてはいけない理由は何もないので,そういう世界なんだからしょうがないと思えばどうということはありませんが...

あらすじ

主人公:岸悟 少年

 ある朝,サトル少年は母から自分が宇宙人であることを告げられる.彼の一族は,ラセスタ星が氷に閉ざされた時,地球に移住し人間に同化したのだという.しかし,この朝,ラセスタ星は元の環境に戻ることなく恒星に飲み込まれてしまった.しかも,元のラセスタ星人の姿に戻れるタイムリミットであるラセスタ周期5歳(地球で10歳)の者が自動的にラセスタ星人に戻り,ラセスタの母星が失われた場合の盟約にしたがって仲間とともに新しい母星を見つけなければならないという.サトルが地球にいられるのもあと2日.サトルは宇宙に旅立つことを親友のたっちゃんとみのっちに告げる.3人は別れを惜しむように残された日を共に過ごそうとする.そして,少年たちは自らの未来に思いを馳せる.

今回の印象に残った台詞

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たっちゃん「パパ,僕が宇宙人だったらどうする?もし,ある日突然,自分が宇宙人だって分かったらどんな感じ?」
たっちゃんのパパ「怖いだろうなあ.」
たっちゃん「怖い?」
たっちゃんのパパ「だって,自分が宇宙人だってバレたら大変なことになるだろう.もちろん人には言えないし,そりゃあ恐ろしく怖くて,そう,寂しいだろうな.」
たっちゃん「寂しい...」
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たっちゃん「大丈夫です.おばさん!絶対誰にも言いません.サトルがラセスタ星人だってこと!」
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みのっち「だっちゃん.ここで待ってよう.」
たっちゃん「そうだな...」
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サトル「母さん.」
母「飲んできなさい.暖まるから.」(ホットミルクを注ぐ)
母「寒いから.」(サトルにマフラーを結びながら)
サトル「心配しないで.」
母「悟.お前はどんな時もお母さんの誇りよ.」
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最後の握手を交わしながら,
みのっち「がんばってね.」
サトル「忘れないでね.」
たっちゃん「忘れないよ.」
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ラセスタ星人(サトル)「ダイナ.地球を出たら,もう,たっちゃんもみのっちもいない.それに母さんも.僕は怖いんだ.新しい星は見つかる?新しい仲間と友達になれる?僕は,僕はどうなってしまうの?」
ダイナ「君の未来は誰にも分からない.何故だか分かるかい?それは,君が創っていくからなんだ.」
ラセスタ星人(サトル)「創る?」
ダイナ「そうだ.何処へ行っても,どんな時も,君の未来は,君が,君の手で創っていくんだ.」
ラセスタ星人(サトル)「ダイナ...」
ダイナ「出発だ.」
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みのっち「いっちゃったね.」
たっちゃん「うん,いっちゃった.」
みのっち「新しい星見つかるかなあ.」
たっちゃん「決めた.俺の未来は宇宙飛行士.宇宙飛行士になってサトルに会いにいく.」
みのっち「それじゃあ僕は科学者になる.それで,たっちゃんの乗る宇宙船を造る.」
たっちゃん「会いにいこうな.二人で.」
みのっち「うん.」
たっちゃん・みのっち「サトル~.待ってろよ~っ.」
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マイ「イリスに集まった生命体が遠ざかっていきます.」
コウダ「まるであのツバサのある異星人を待っていたみたいだ.」
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重箱の隅

ニュース

 惑星ラセスタの消滅を伝えるTVニュースは聞き取れた範囲では以下の通り.

ケリガン星系の惑星ラセスタが同星系の惑星リミトに吸収され,消滅しました.これは惑星ラセスタの軌道にズレが生じ,惑星リミトに接近ししずぎたために....

 惑星ラセスタの消滅を伝える新聞記事は読み取れた範囲では以下の通り.

・・・最期,惑星ラセスタ消滅(見出し)
・・・宙局広報部(撮影)TPC惑星探査機テト(写真のキャプション)
・・・七惑星・・・第六惑・・・され消滅・・・
 今回,・・・スタを含む・・・は太陽系と・・・をもつ星団で・・・究者の間では・・・在の可能性に・・・ていた星団であ・・・も惑星ラセスタは・・・も地球に特に近・・・ントス星系の惑星の・・・知的生物の存在に対・・・待が特に大きかった惑星で・・・しかしながら,今回,・・・C宇宙局所属惑星探査機・トによる調査によれば,・星ラセスタは,その表面を全て氷に覆われた状態で,長い氷河期の中にあった事が判明した.したがって,惑星ラセスタに知的生物が存在していた可能性は少なくなったが,水,酸素の豊富なこの星に,過去に生物が存在していた可能性・・・

TPC宇宙局所属/惑星探査機テト

 パラボラアンテナと2枚のソーラーパネル?のウィングが特徴的な惑星探査機はテトは,上記のニュースからみて,地球外知的生命体の発見を期してケリガン星系に投入されたと思われます.残念ながら,最も地球に近い環境を持ち,知的生命体の存在する可能性が高かった惑星ラセスタは別の惑星リミトに衝突して消滅してしまいましたが,その前に大気の組成や温度,軌道のズレなどのデータは取れたようです.実際,過去にラセスタ星人がすんでいたのだから狙い目は悪くなかったということですね.もう少し時間があれば,氷の下にラセスタ文明の痕跡を発見できたかもしれませんし,遺跡に残った情報を元に宇宙に散らばるラセスタ星人ともコンタクトがとれたかもしれません.そうなれば,サトルの運命もまた違ったものになっていたかも...

 考えてみるに,TPC世界では宇宙人は一方的に地球にやって来るだけで,こちらから他の星まで出かけていって外交関係を樹立することは未だ出来ていません.科学的興味以外にも他の星の文明との本格的な交流にも期待がかかっていたのではないでしょうか?惜しい所でしたね.

 ダイナの時代にはまだ超光速航法が確立していません.(「運命の光の中で」のゼロドライブ航法参照)その一歩手前のネオマキシマ航法が実用になっているのみです.ダイナの世界の宇宙の構造がどうなっているのかは情報がありませんが,おそらく通常の化学燃料を使った航法では他の恒星系に辿り着くのは時間的にも技術的にも絶望的でしょう.マキシマオーバードライブが完成したのがティガの時代.この話の10年前くらいだと思われます.マキシマが出来てすぐにテトを光速ギリギリまで加速して送り出したとしても辿り着けるのは10~11光年以内という事になります.

 我々の世界に当てはめてみると,太陽系から12光年以内の恒星は18個.このうち多少なりとも知的生命体がいる可能性があり,オズマ計画の対象になったのが,10.5光年の 52 tau Cetiと11.8光年の 18 varepsilon Eridani.残念ながら見つからなかったみたいですが...こうして見ると,ラセスタ星の話もあながち無理な設定ではないのかも.

 我々はさすがに他の恒星系に直接探査機を送り込む能力はありませんが,今でも地球外知的生命体探査は続けられています.一般の人が協力できる部分もあるみたいですね.

超光速通信

 ちなみに,劇中ではS-GUTSは,テトから情報や,トナカイ座のイリスの情報をリアルタイムで入手していました.情報だけなら光速を越えて送る事ができるような我々の知らない技術がダイナ世界ではあるようです.恐るべし.

トナカイ座のイリス

 ラセスタ星人たちが集合場所にしたトナカイ座のイリス.我々の世界の現行88星座にはトナカイ座はありません.しかし,過去に一時期設定されていた事があるようです.北天のカシオペア座と北極星の間あたりだそうです.イリスはさすがにありませんでした.太陽系内の小惑星ならイリスというのがありますけど...イリスとはゼウス神のメッセージを運ぶ女神の名前だそうですから,集合場所の名前としては幸先がいいかもしれません.

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