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ウルトラマンダイナです.
色々考えさせられる話なんでおそくなりました.
いや、むしろ考え過ぎだったかも

◆ 第33話「平和の星」

脚本/長谷川圭一,特技監督/佐川和夫,監督/小中和哉.
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満足度: ★★★+

鑑賞メモ

 これも少し大人っぽい雰囲気で面白い作品でした.都会の片隅に生きる一匹狼のフリーランスのルポライター・ハスミと物怖じしないプチ家出少女ソノカの物語.ハスミの少し影のある孤独な大人の人物造形と、ソノカの快活だがちょっと反抗的なキャラクターを演じた役者さんの演技が光っていました.

ハスミという男

 ハスミという男は,社会の中の影を見つけ,批判的な視点で徹底的に追いつめていくタイプのジャーナリストです.ですがその反面、人間関係にはどちらかというと不器用なタチ?彼の追求型ルポライターとしての能力と孤独な私生活は,彼の性質からくる表裏一体のものであるようにも感じられます.また,それは彼の「優しさ」という美点とも相まって彼を深みのあるキャラクターにしていると思います.ティガに出て来たオノダ記者とは別の意味でジャズの似合う男ですね.

 ハスミとソノカの間で交わされる会話、

ハスミ「仮に、お前の言う通りだとする.でも何か不都合があるか?手に負えない不良どもがいい子になり、家族に平和が戻る.それのどこが悪い?お前は現実を受け入れるのが嫌なだけなんだ.だから宇宙人だなんて妄想...」
ソノカ「妄想って何よ!」
ハスミ「だから,逃げるなってことだ!帰れる家があるなら帰れ!本当に戻れなくなる前に...その前に帰れ...」
ソノカ「大人は狡いよ.みんな父さんと一緒だよ!結局、自分に都合のいいものしか見ようとしないんだ!」

は,なかなか強烈なものがあります.

 表面的には、「自分に都合のいいものしか見ようとしない」=「不良どもがいい子になるなら宇宙人の陰謀を追求しない」だと思いますが、もう少し深く考えると「子供の本当の気持ちを理解しようとしない」であるでしょうし,さらに深読みすると、「大人の方が現実から逃げている」という意味も図らずも持ってしまっているのかもしれません.もしそういう意味をハスミが感じ取っていたとすれば、「逃げるな」という言葉が家庭生活を維持できなかった自分に跳ね返って来ていることになります.

ソノカという少女

 ソノカは,青年期の入り口にたつ少女.ことあるごとに頑固な父親と衝突し、仲間とローラーキッズのチームを組んで夜の街を暴走することをこよなく愛しています.だけど,芯はしっかりしているし(頑固?),優しい面も併せ持っているようです.

 ソノカの冒頭の台詞、

ソノカ「その子、ステラって言うの.捨てられ猫だから.普段ならゴメンって謝って、無責任に拾って来たりしないけど、あたしら似た境遇だよななんて思うとさ.仲間意識って言うの?なんか意気投合しちゃってさあ.」

からは,彼女のいろいろな面が伺い知れます.

 まず,「普段ならゴメンって謝って、無責任に拾って来たりしない」ってとこがいいですよね.決してわがまま一辺倒の人間ではないし、優しい気持ちも持っていることを示しています.そして,それでもあえてステラを拾う決断をしたのはステラに自分の姿を重ねて見たからでした.それはおそらく,疎外感、孤独感と傷心、漠然とした不安、そして若さ故の元気といったものだったのではないでしょうか.

 劇中でソノカは親父さんについてこう言っています.

ソノカ「なんでもかんでも命令口調.息が詰まる.」

 これは親父さんに対してだけではなく、「大人」の社会へ向けられている反抗心でもあるようです.ソノカがハスミを頼りにしたのはルポライターとしてだけでなく、彼の権威への挑戦的態度や孤独感と傷心を敏感に感じ取り、親近感が湧いたからかもしれませんね.

闘争本能、反抗心というマイナスエネルギー

 ソノカの仲間が急にいい子になったのは「闘争本能、反抗心」などの「心のマイナスエネルギー」を宇宙人に全て吸い取られたからでした.彼らナルチス星人自身の母星では、既に「心のマイナスエネルギー」を取り去って「平和の星」となった代償に戦闘能力を失ったといいます.

 ナルチス星人は簡単に闘争本能や反抗心を「マイナスエネルギー」と断じています.確かに、闘争本能や反抗心を全て吸い取ってしまえば、「平和」にはなるかもしれません.しかし,闘争本能や反抗心は時として自立やアイデンティティ確立の萌芽であり,前進へのエネルギー源ともなります.だから,ソノカは大人になるために父親と衝突を繰り返すのでしょう.反抗心を吸い取られたソノカがハスミに「お前誰だ?お前、ソノカじゃない.」と問われたときに、「え?私は...私は...私は...私は誰っ?!」と叫び昏倒してしまうのは何かとても象徴的な気がします.

 本当に暴力的な戦いをするべきかどうかは別にして、心の中で行われる自立のための闘いまで放棄したナルチス星が手にしたのは閉塞し停滞した「平和」だったのかもしれませんね.(ただし,成長に伴う反抗の程度は、周囲の状況、文化、個人の資質などに依存して変わるそうですから本当は一概には言えないです.)いずれにしても,「マイナスエネルギー」とばかりは言い切れないわけです.諸刃の剣ながらネオフロンティア時代には必要なものかもしれません.

 物語のラスト、ソノカは奪われた反抗心と仲間を取り戻します.そして仲間とバンドを組みいつか大きなステージに立つという夢を持つようになりました.さて、ハスミ自身がこの事件で得たものはなんだったのでしょうか...ハスミを主人公にした話をもう一本見たかった気がします.

ステラという子猫

 捨て猫のステラ.最初にハスミを起こした以外はひたすら食事していました.ジャズバーのカウンターではソノカとハスミの会話はどこ吹く風、見事な食べっぷり.とにかくかわいい.(ちなみにオープニングのクレジットによれば芸名も「ステラ」のようです.)

あらすじ

主人公:ソノカ&ハスミ

 TPCの戦力増強に批判的な記事を書くルポライター・ハスミの元に家出少女ソノカが現れた.彼女の仲間が急に豹変して「いい子」になってしまったのは宇宙人の仕業に違いないから調べてほしいという.ソノカの言い分を信じなかったハスミだったが、一応ソノカとともに調査を始めた.しかし、自分の家庭を失った(?)ことのあるハスミは、調査の過程で他人の「平和な」家庭を監視することに嫌気がさし、ソノカと対立してしまう.翌日、独力で調査を続けるソノカを迎えにいったハスミの見たものは、宇宙人に反抗心を吸い取られ「いい子」になったソノカの姿だった.ソノカの異変に気付いたハスミだったが、ソノカ、その父ヒビキ隊長とともに宇宙人に捕らえられてしまった.そこへ急行するS-GUTS!....

今回の印象に残った台詞

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タツミ「辛口?正直なところを記事にしているだけです.科学者中心の非武装組織が母体だったGUTSに対し、現在のS-GUTSは戦闘集団としての色合いが強い.これはヒビキ隊長、貴方の方針ですか?」
ヒビキ「我々の目的は戦うことじゃありません.が,しかし,人間が前に進もうとするとき、新たな未知へ挑もうとするとき,そこには避けることのできない戦いもあります.」
タツミ「聞こえのいい言葉ほど危険なものはない.特に貴方の口から聞くと...」
ヒビキ「ハスミさん.貴方が記者としての誇りをもっているように,わたくしも自分の仕事に信念を持っています.そこに人間の未来と正義を信じて...」
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ソノカ「絵に描いたような家族の団らんよね.気味悪いわ.」
ハスミ「どこが気味悪い?」
ソノカ「え,だってショウは親と口なんか何年もまともにきいていないって言ってたのよ.それに...」
ハスミ「そっちの方がよっぽど普通じゃないだろう!」
ソノカ「なに怒ってんよ?」
ハスミ「親と子が一緒に居ない方が不自然なんだ...」
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ハスミ「仮に、お前の言う通りだとする.でも何か不都合があるか?手に負えない不良どもがいい子になり、家族に平和が戻る.それのどこが悪い?お前は現実を受け入れるのが嫌なだけなんだ.だから宇宙人だなんて妄想...」
ソノカ「妄想って何よ!」
ハスミ「だから,逃げるなってことだ!帰れる家があるなら帰れ!本当に戻れなくなる前に...その前に帰れ...」
ソノカ「大人は狡いよ.みんな父さんと一緒だよ!結局、自分に都合のいいものしか見ようとしないんだ!」
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ナルチス星人「闘争本能、反抗心、若者達からそんな心のマイナスエネルギーを全て吸い取ってあげたのです.」
ハスミ「何故?」
ナルチス星人「心のマイナスエネルギーは強大です.我々はそれを集め、無敵の生物兵器メノーファを作っているのです.」
アスカ「なるほどな、この化け物で地球を侵略しようって...」
ナルチス星人「これは正当防衛です.」
ハスミ「正当防衛?」
ナルチス星人「我々ナルチス星人の科学は、心の中のマイナスエネルギーを全て抹消することに成功しました.つまり,争いのない平和の星が誕生したわけです.が,それは,我々から戦う力を奪う結果ともなりました.我々は宇宙を食い荒らす君たち地球人が恐ろしい.」
ヒビキ「何が平和の星だ.黙って聞いてりゃ勝手なことばかり並べやがって!」
アスカ「そうだ.若者達を元に戻して、さっさと自分の星に帰れ!」
ナルチス星人「やはり,地球人との会話は無駄でした.」
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ヒビキ「けんか相手に肩を借りるほどやわな体じゃねえ.」
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ハスミ「ヒビキ隊長.無茶だ.そんな体で!」
ヒビキ「お互いプロだろ?カメラの準備はいいのか?」
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ヒビキ「ソノカ.俺のことが許せないならそれでいい.憎んだって構わねえ.それが本当のお前なら全部きっちり受けて止めてやる!」
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ハスミ「お前さあ、父親に似なくてよかったな.」
ソノカ「でも,頑固なとこは父親譲りかもね.」
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ハスミ「よう.親父さんの具合どう?」
ソノカ「もう怒鳴りまくっているわ.恐るべき生命力.」
ハスミ「なら俺もまた仕事に張り合いがでるよ.」
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重箱の隅

世論調査

ー災害(おそらく怪獣災害)への対応は?

  1. 現在のままでよい→24%
  2. 戦力の増強が必要→48%
アナウンス「TPCの再軍備化を支持する市民の声が予想以上に多いことがTPC広報の行った世論調査の結果、明らかになりました.この調査は世界●●ヶ国で行われたもので...」

 これはナルチス星人が見ていたテレビ放送の一部ですが、世論がTPCの再軍備化へと傾きつつある背景を伺わせます.

タツミのモノローグ「ネオフロンティア時代の幕開けとともに、GUTSはS-GUTSに移行された.滅亡の闇を乗り越え、新たな時代へと進む人類.本当にそうだろうか...?俺にはむしろ時代は過去へと逆戻り...」

 ティガの前の時代には、各国軍隊の地球防衛軍への併合、そして,地球防衛軍のTPC警務局への縮小再編が行われています.ここまでは,軍備というものが人間同士の紛争に使われるものとして考えられていたようです.ティガでは,このプロセスを通じて人類は恒久平和を実現したと説明されていました.しかし,怪獣災害の激増、侵略宇宙人による怪獣テロの頻発を受けて、TPCの再軍備化が急ピッチで進みつつあるというのが時代背景のようです.市民もある程度の武装強化を望んでいるようです.そんな時代の流れにハスミは危険なものを感じているようです.

 いい悪いの判断はここではしません.理想を言えば、力づくの解決は一切しないで平和を守るというのが一番でしょう.でも,一時的にせよ、それが通用しない事態に遭遇したときどうするかは,判断が分かれるだろうし、絶対の正解はないと思うからです.万一のときには加害者になるくらいなら被害者になるというのも一つの決断だろうし、真に守るべきもののためなら実力行使も躊躇しないというのも一つの決断でしょう.(おそらく現実は両者の中間でしょう.)時代や状況にも依存するでしょうしね.

 ティガの「うたかたの・・・」や「蜃気楼の怪獣」での議論を思い出しますね.

 ただ,圧倒的な力を持っているものは,力に奢った安易な実力行使はしないという高い自覚と判断力が要求されるはずです.ハスミはS-GUTSにほとんど信頼を寄せてはいないし、危険だと思っている.他方、S-GUTSは自分に誇りを持っていて,ハスミの批判がいわれの無い中傷に思える.だから議論が噛み合ないわけです.

 プロメテウスの一件では、力を求めるゴンドウ参謀にS-GUTSの方が批判的でした.今度はS-GUTSが批判される側にまわっているわけです.皮肉と言えば皮肉.

 とはいえ、この話のテーマは軍備の是非ではなく,闘争本能や反抗心と平安の関係がテーマだと思います.軍備云々は深入りはしない方がいいかもしれません.

イーグルスペリオル

 新型機イーグルスペリオルの形とカラーリングは、まさに現代的にリファインされたジェットビートル(初代ウルトラマン).ジェットビートルは丸みを帯びたデザインでしたが、こちらは平面と直線を生かしたデザイン.なかなかかっこいい機体でした.裏設定ではZERO訓練生が開発中のテストパイロットを勤め、テスト飛行中に命を落としたことになっていました.(「空想特撮映像のすばらしき世界」に掲載)一説によると1話でアスカとS-GUTS入りを争っていたフドウだったのではないかとも言われています.

ティガとのリンク

 この話から前作ティガとのリンクが徐々に増えてきました.

 今回出てきたジャズバーは、ティガではオノダ記者とムナカタリーダーが通っていた場所.エンディングでは、店の中に「イルマ隊長とムナカタリーダー」、「オノダとハスミ」、「オノダとユキナ」のポラロイドが飾られていました.意外なところで人間関係が繋がっています.

 ティガ33話「吸血都市」でユキナを演じた椰野素子さん,他に劇場板ウルトラマンティガのカミーラのスーツアクターやティガ8話「ハロウィンの夜に」で魔女役を演じられたのは前にも書きましたが、このダイナ33話「平和の星」ではなんとナルチス星人を演じておられます.これも言われるまで全然気がつきませんでした.でも、よく注意してみると身振り手振りの仕草やリズムがカミーラとよく似ていますね.

ナルチス星人

 ナルチスという人物がヘッセの「知と愛」という作品に出てくるそうです.(読んだことは無い).小説は、愛ー芸術ー感情の人ゴルトムントと知ー精神ー学問の人ナルチス,全く正反対の二人の愛憎半ばする友情を巡る物語だそうです.ナルチス曰く、目指したものは「感覚的なものの無視であり、純粋に精神的な世界の建設の試みである。」だとか.互いに惹かれ合う「冷徹な論理」と「熱い情念」という観点から見てみるのもいいのかも...



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