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ウルトラマンダイナ

◆ 第38話「怪獣戯曲」

脚本/村井さだゆき,特技監督/佐川和夫,監督/実相寺昭雄.
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満足度: ★★★★-

鑑賞メモ

 S-GUTSの文系方面の名探偵カリヤ隊員と久々登場のシンジョウ・マユミ看護婦が活躍. (しかし、今回は見る方にも要求される知識が多く、難解な面もあります.とてもフォローしきれないので今回はリンクを多めにさせていただきました.)

 今回のエピソードはシリーズ中では異色中の異色作ですが、村井さだゆき脚本の不可思議ワールドと実相寺昭夫監督の独特の映像美が相乗効果を生み、妖しくも魅力的な作品でした.

 戯曲が街に飛び出し現実化してゆく展開の中で、囚われのアスカはウルトラマンであることは夢に過ぎないと告げられます.ウルトラマンダイナの世界ではそれは単なる嘘に過ぎませんが、物語を見ている我々には事実です.そして、劇作家ナルミは、ウルトラマンがもたらす大団円を嫌い、結末を封印しようとします.しかし、我々の世界では封印するまでもなく、都合良く銀色の巨人が現れて破滅を回避してくれたりはしません.我々から見れば、ウルトラマンの登場は「ウルトラマン」という虚構の物語の枠組みがそれを要求するからであり、いいかえれば、我々自身がヒーローを渇望し、波乱の後には平穏が戻ってくることを強く望んでいるからに他なりません.

 我々から見れば虚構の世界の中で、さらに劇中劇という虚構をつくる男ナルミは、自らの戯曲と錬金術の力=(虚構の中の虚構)でダイナの世界(虚構)を打ち破ろうとします.しかし、ナルミの戯曲にも内在化した大団円のベクトルが潜んでおり、彼の野望は水泡に帰してしまいます.それは、ナルミの戯曲=虚構がダイナ世界の現実に破れたのか、ダイナ世界という虚構が現実的な展開を拒否して飲み込んだのか...錬金術、謎の記憶喪失の男、結末が封印された戯曲、架空世界の現実化と現実感覚の喪失.これらは皆、深層心理や象徴作用とかと関連していそうですし、世界の意味付けが転倒するという実にSF的な味付けもあり、意味深でよい雰囲気が出ていたと思います.

 現実感や世界の確実性への信頼を揺さぶるような村井さだゆき氏の作風は、「ウルトラQ dark fantagy」の「右365度の世界」にも色濃く現れています.「我夢で胡蝶なるか、胡蝶夢で我なるか」(荘子)あるいは「現実(うつしよ)は夢、夜の夢こそ真実」(乱歩)などの例を引くまでもなく、そういう揺らぎや主観的世界からの脱出の不可能性などを題材にした作品は古今東西に数多くありそうですが、最近のウルトラシリーズではこの2作が双璧なんじゃないでしょうか?(ただし、「右365度の世界」は量子力学をある程度知っていないと判りにくいという欠点もあります.どちらの作品もハイブロウですよね.)「怪獣戯曲」に関して村井さだゆき氏自身が語った内容がこちらのホームページに引用されています.読んでみてはいかがでしょうか?また、今回の実相寺監督の映像についてはこちらのホームページで簡単に分析されているようです.

あらすじ

主人公:?

 「怪獣ブンダーが来る!」そういって記憶喪失の青年が街で倒れふした直後、強大な塔が天空より飛来し、塔は怪獣ブンダーとなる.調査を開始したS-GUTSはその青年が劇作家ナルミ・ヒロヤが「カスパーハウザー」と呼ぶ劇団員であることを突き止める.行方不明のナルミは自らの妄想が生み出した「怪獣戯曲」を錬金術の力を用いて現実にしようとしていたらしい.しかも、その戯曲は大団円となるべき結末が何処かに封印されていた.結末の行方を探すカリヤとマユミ.やがてマユミは隠し絵として隠蔽された結末を発見した.その直後、囚われの身であったアスカは自由になりダイナへと変身した.ダイナに敗れ去るブンダー.

今回の印象に残った台詞

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ミヤタ参謀「ナルミは空想だけでは飽き足らず、現実を破滅的な演劇空間に変えようとしたのか.」
リョウ「劇作家にとったら世界が舞台.劇場空間ですからね.」
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ナルミ「『怪獣戯曲』の上演の日も近い.我が劇団も解散だ.」
記憶喪失の劇団員「なんですって?あの、私たちはどのようにすれば良いのです?」
ナルミ「その日のために厳しい稽古を重ねてきたんじゃないのかね?いよいよ、街全体が君たちの晴れの舞台になるんだよ.」
記憶喪失の劇団員「しかし、先生.」
ナルミ「臆することは何も無い.書を捨てて町に出るんだ.」
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ナルミの演じる錬金術師「記憶を失いし男、カスパーハウザーよ.お前こそ怪獣の生みの親になるのだ.怪獣とは一体なんだ?それは人間たちにとって欠落したもの、理解を超越したもの、邪悪、異端、悪魔の使い.それが人間たちには解らないんだ.物語の中で抹殺できると考えている.」
カスパーハウザー「おっしゃる通りです.」
ナルミ「怪獣.この驚異なる存在、それが人間のカタルシスの道具にされていいのか!だから私は現実の世界に怪獣を生み出してやるんだ.この劇場のプロセニアムの中だけが演劇ではない.私は現実の世界を私の妄想で支配してやるんだ.ははははは.」
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ナルミ「舞台稽古は終わった.諸君は劇場としての街に戻ってくれたまえ.」
記憶喪失の劇団員「街が劇場?」
ナルミ「私はこの戯曲の結末を封印しよう.こんな大団円では意味が無いんだ!駄目なんだあああ!駄目なんだ!」
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謎の女「夢から醒めて?」
アスカ「何者だ?お前は!」
謎の女「貴方は自分がウルトラマンダイナだという夢を見ていただけ.ふっふ、ふふふ.」
アスカ「何いいっ?何を企んでる?」
謎の女「TPCもS-GUTSもこの世界には存在しない.全部、貴方が頭に描いた夢.」

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マユミ「真実は鏡に映る、か...アナモルフォーシス!つまり隠し絵だったのよ!」

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ナルミが怪獣戯曲を封印した理由が今や明らかになった.彼の想像力も大団円にウルトラマンダイナを出現させることでッ戦いと戯曲を完成させていたのである.だからその結末をナルミは気に入らなかったのだ.
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夢と現の垣を取り払ったナルミはどこへ消えたのだろうか?また世界のどこかで新たな怪獣戯曲を書き始めているかもしれない.
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重箱の隅

フロッピー

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アスカ「カリヤ隊員、凄いフロッピーがありますよ.」
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 う~ん.2018年でもフロッピーディスクですか....ナルミはオールドテクノロジー好きのようです.マイは錬金術を調べるのに光学ディスクを使っていたんですが...

錬金術

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ところで、ここで錬金術師たちは重大な問題に直面する.如何にすれば世界霊魂を手にすることが出来るのか.という問題である.たとえば世界霊魂を収集し壷のようなものに容器に収集するという方法をとるしかないのではないか.そうであるなら、世界霊魂を保管できるような壷とは一体如何なる壷であるのか?また、そのうえ世界霊魂を保管するためには、それを一度液化することが必要であると考えられるが、それは如何にして液化すれば良いのであろうか?
 以上のような疑問については錬金術師たちは以下のように答えている.まず世界霊魂を吸収し、そのうえで、その触媒となるほどに充分に純化した元素を手にいれる.それを使用して世界霊魂を収集し保管すれば、物質を変成させることは実際に可能になる.
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ナルミの演じる錬金術師「生命の母体として、何も無い、何も見えない、何も聞こえない混沌.記憶喪失.完全なる無の闇が必要なのだ.そこでこそ妄想が現実に生まれ変わる.さあ、手術を始めよう.これこそが驚異を生む種、人類誕生以前の原始の記憶.絢爛たるバロック.さあ、怪獣として蘇るがいい.バロックとは歪んだ真珠のことだ.解るか?この驚異の種を馬の糞とともにフラスコに入れ、40日間、華氏451度で熱し、さらに40週間、物語の血、肉、骨格とともにマンドラゴラの根を与え続けると、自ずと怪獣の形を為す.」
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 「純化した元素」=「記憶喪失であり、完全なる無の闇を持つ人物から取り出した歪んだ真珠」=「バロック」=「理知的構造より感情.感覚的効果、豪華な装飾と幻想的な錯視効果を重視する芸術形式」ということでしょうか?バロックについてはこちらのホームページで解説されているようです.

 「華氏451度」はブラッドベリのSFの題名にして「書物が自然発火する温度」.「華氏451度」についてはこちらのホームページで紹介されているようです.

 「マンドラゴラ」は西洋魔術ではおなじみの魔力を秘めた植物ですが、私は詳しく知りません.(「魔法戦隊マジレンジャー」に出てくる「マンドラ坊や」も「マンドラゴラ」の一種みたいです.)「マンドラゴラ」についてはこちらのホームページが詳しいようです.

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ナルミ「臆することは何も無い.書を捨てて町に出るんだ.」
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 「書を捨てよ、町へ出よう」は寺山修司の評論集、舞台、映画(3作品とも同じタイトルだが別個の作品).私は寺山修司の作品はひとつも鑑賞したことはありませんが(<そういう方面には弱いんです.)、評論集の以下の文章はつとに有名だそうです.

「あなたの人生は退屈ですか。どこか遠くに行きたいと思いますか。あなたに必要なのは見栄えの良い仕事でも、自慢できる彼や彼女でも、お洒落な服でもない。必要なものは想像力だ。一点豪華主義的なイマジネーションこそが現実を覆す。書を捨てよ、町へ出よう―。とびきり大きな嘘を抱えながら。」

 「マンドラゴラ」はともかく、「バロック」、「華氏451度」、「書を捨てよ、町へ出よう」いずれも情熱的でラディカルで、閉塞した現状への異議を孕んだ作品のようですね.

カスパー・ハウザー

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ナレーション「記憶喪失者で名高いのは19世紀初頭、ドイツはニュルンベルグに突如出現したカスパーハウザーなる少年である.貴族の落しだねとも、別世界からの来訪者とも言われる.その存在は多いに当時のロマンチシズムを掻き立てた.」
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 19世紀とはいえ、カスパー・ハウザーは実在の人物なので、いい加減な知識での論評は避けておきます.カスパー・ハウザーについてはこちらのホームページが詳しいようです.

ブンダー

 怪獣ブンダーの出現シーンには背後に「ブンダーバー、ブンダーバー」という謎の詠唱が聞こえる.wunderbarはドイツ語で驚異、恐怖の意味.「理解を超越したもの、異端」とも相通ずる命名ですね.

 その怪獣ブンダー.画面はよく見ると最後は自分の触手で自滅しています.大団円が運命付けられている戯曲の中の災厄らしい終わり方と言えるかも.

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